2017年7月12日水曜日

最低なディズニーランドの思い出


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私は人生で一度だけディズニーランドに行ったことがあります。
それは夫とです。

小さい頃から家族とも行ったことの無かったディズニーランド。
女性なら誰しも憧れる場所であると思いますが、私には縁の無い場所と諦めていました。
でも夫とそういう関係になって間もない頃、私は20代の後半でしたが、男の人とそんな場所に行く機会なんて他に無いと思い、私なんかがと思いながらも、思い切って「ディズニーランドに行ってみたい」と言ったことがありました。

夫は「ディズニーねぇ…」とめんどくさそうにしましたが、まあいいかと言って連れて行ってくれました。
といっても全ての料金は割り勘でしたので、連れていってもらったという表現は違うかもしれませんが。

私たちの休みは土日しか無かったので、たしか土曜日に行ったと思います。

シーでは無く、ディズニーランドのほうでしたが、土曜日ということもあって人でごった返していました。
主要なアトラクションは軒並み100分待ちだの120分待ちだの表示されていて、ひどいものでは最高で140分待ちというのも見受けられました。
夫はそれを見てうんざりして「俺はあんな列には絶対並べないぞ。60分以内のやつにしてくれ。」と突き放されてしまいました。

土曜日のディズニーランドで、60分以内で選ぶとなると、ほんとにほとんど主要なものは外して考えないといけませんでした。
人生で初めてディズニーランドに来て、スペースマウンテンもスプラッシュマウンテンも素通りして、できるだけ空いているほう空いているほうへと行きたがる夫に、後ろ髪を引かれる思いで付いていって、仕方なく人気の無いアトラクションに並んでいました。

並んでいる間も「暑いなぁ…」とかそんなことばかり。(7月頭くらいでした)
彼がそんな感じなのに、自分だけ舞い上がっていてもおかしいので、自分も口を合わせてネガティブなこと「人混みで嫌だね」とか言っていましたが、本当はそんなこと言いたくなかったです。
もっと「楽しいね、楽しいね」と言って過ごしたかったんです。

ある時彼が、通りかかった売店で、ターキーか何かを食べたいと言って買いました。
それが、具体的な金額は忘れましたが、普通の感覚から言うとすごく高かったんですね。
たしか二人で二本買うと、それだけで千円以上かかる感じで、私はもったいなくて買えませんでした。

今の私なら絶対言いませんが、あの頃の私は、彼の性格をあまり把握していませんでしたので、特に何も考えずに「一口ちょうだい」と言っていました。
彼は非常に嫌がり

「欲しいなら自分の分も買えよ!」

と怒り出しました。

「だって高いから…二本も買うのもったいなかったんだもん…」

一本も買って全部食べるほどじゃない、そういう感覚って女性ならよくあると思うのですが、結局一口も分けてくれませんでした。

その後余計に口数も減り、だんだんイライラしてきた彼の空気を感じつつ、私はだいぶ歩き回ったこともあって、どうしても喉が渇いてしまいました。
こういう場所の飲み物はすごく割高なのは分かるので、自分でも嫌だったんですが、「ごめん…ちょっと飲み物買ってもいい?」と控えめに聞いてみると

「さっきあんだけ高い高いって文句言っておきながら、結局自分も買うのかよ」

と嫌味たらたらで言われました。
お茶を買ったら買ったでさらに畳み掛けられます。

「そんなコンビニでも売ってるもんそんな値段で買って馬鹿じゃねぇの。ここでしか買えないもの買えばいいのに。」

もう私は何も楽しめる気分で無くなり、一体何をしにきたのか分からなくなって、後半はアトラクションにも並ばずに、お茶を飲みながらとぼとぼと歩いていました。

するとそこに賑やかな音楽にのって、華やかなパレードが近づいてきました。

”ハピネス・イズ・ヒア”というパレードで、ロマンチックでドラマチックな音楽に合わせて、ミッキーやいろんなキャラクターたちが、乗り物の上で楽しそうに踊ったり手を振ったりしています。
まさにディズニーランドを象徴するような、幸せの魔法みたいなパレードで、私はそれを初めて見て、ああこういうのに憧れて、こういうのを好きな人と幸せな気持ちで眺めてみたかったんだと思いました。

私はそれを無言で眺めて、美しい音楽をどこか遠いところで流れているような感覚でぼんやり聴きながら、その幸せの空間に、ぽつんと取り残された自分を強く意識して、パレードを取り囲んで楽しそうにしているカップルや家族たち、みんなが居るその”ヒア”には私は入っていけないのだと実感し、ものすごく物悲しい気持ちになったのを覚えています。

その後あまり記憶は無く、結局最後のエレクトリカルパレードなども見ずに帰って来ました。

電車の中でも「あー疲れた。」と時折ため息交じりに呟く彼に、私はこう言って俯いてるだけでした。

「疲れたね…」



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